森博嗣『すべてがFになる』@小野 茸

内容(「BOOK」データベースより)
孤島のハイテク研究所で、少女時代から完全に隔離された生活を送る天才工学博士・真賀田四季。彼女の部屋からウエディング・ドレスをまとい両手両足を切断された死体が現れた。偶然、島を訪れていたN大助教授・犀川創平と女子学生・西之園萌絵が、この不可思議な密室殺人に挑む。新しい形の本格ミステリィ登場。

■感想■

まず、第一にこの作品は好き嫌いの分かれる作品であると言える。奈須きのこ然り、森見登美彦然り。文体の合う合わないは絶対に存在するが、森氏の作品もそうであるといえるであろう。

3人称と1人称を混ぜ合わせたような文体は、私は嫌いである。小説ではなく評論を呼んでいるような気分になるのはこのあたりからくるものであろう。また、理系的な文章であるので苦手な人には苦手だと思われる。

トリック自体はそこまで奇抜なものではなく、ある程度は見通せる類のものである。しかし、そのトリックを活かすために作られた舞台設定や登場人物の関わり、心理描写などは素晴らしい。「全てがトリックのために」と思うのは私の思い込みかもしれない。しかし、そのようなことを感じさせる作品であった。

文章はお世辞にもお勧めできない。しかし、作品として見たならば十分進められる作品だったと思われる。