2014-08-01から1ヶ月間の記事一覧
あらすじいなくなる人のこと、好きになっても、仕方ないんですけどね。どうやら俺の人生には、今後何一つ良いことがないらしい。 寿命の”査定価格”が一年につき一万円ぽっちだったのは、そのせいだ。 未来を悲観して寿命の大半を売り払った俺は、僅かな余生…
『私は図書館でストラップの付いた鍵をなくした』 一行だけポツンと書かれたノートを見て、早織はぼやく。 「なにこれつまんない!」 そう言って彼女は手元のノートをパタンと閉じた。表紙に『三題噺帳』と書かれているそれは、彼女自身が課した毎週の課題で…
釣り上げられ、橋の上に置かれたバケツに放り込まれたザリガニが泡を吹き出している。わずかばかり入れられた水すら照りつける太陽で茹だっているのだろうか。 たまに底を這う音がして、まだ生きているんだなと確認できた。 季節は夏真っ盛り。人を刺し殺せ…
『ペン』『傘』『水草』 水性ペンの、紙と擦れるあの摩擦が、僕は嫌いだ。 彼女はノートにピンクのマーカーを引いていく。胃の縮むような音を立てて。 清潔な部屋。硬質な音。微かなカルキの臭い。ぬめりとした感触。 プレパラートに載せた水草は、下から照…