- 作者: 氷川透
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2003/04
- メディア: 新書
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会議室の死体×衆人環視の現場=究極の不可能犯罪
殺される前も後も室内には被害者ひとりきり。
左右の廊下には複数の人間が、非常口の前には監視カメラが出入をずっと見張っている。
こうして密室状況は作りだされた。
一見平凡な殺人事件は、論理的に不可能犯罪へと飛躍したのだ!
(Amazonより引用)
◆書評
ミステリのジャンルも色々あるが、結局は「トリック」と「ロジック」の比率が決定しているとさえ言える。
その中でもこの作品、ひいては作者が得意とするのは8割、下手をすれば9割、10割が「ロジック」という、とんでもないものだ。
具体的にそれがどうかという話をさせてもらえば、そのトリック自体は何の変哲もないもので、むしろ「勝手に偶然にその状況になってしまった」とさえ言っても過言ではない。ではこの小説では何をしているかというと、「どうしてそんな状況に陥ったのか」を事細かに詰めているのだ。つまり徹底した論理的な理詰めである。
好きな人には垂涎物だが、一般の人にとってはかなりとっつきにくいのもまた確かだ。というのも徹底した論理的な理詰めというのは、言ってしまえば脳内でパズルゲームをしているのに近しい。全体図を把握していない状態で与えられた情報をもとに完成図へ導き出す、つまりは高等な脳内遊戯を小説に焼き直したとさえいえるのだ。
確かに内容そのものはトリックがあるわけでもないので面白さはいまいち分かりにくいところがある。だが、脳内遊戯ゆえに「情報が一つ分かる」あるいは「情報の信憑性が瓦解する」ことによっていとも簡単にそれまで出来ていた完成予想図が崩壊していくというのは、新たな挑戦志向を呼ぶものである。
情報の羅列とも見える難読な小説であるのは確かである。軽い気持ちで読み始めたら痛い目を見るかもしれないが、それでもはまったらとことんはまり込むことも確かである。
あなたも一度、脳内の論理遊戯をしてみませんか?