2018-01-01から1年間の記事一覧
金曜日の夜、寿司子とサイゼリヤで飲んでたら「ねえアヤちゃんー、かき氷食べにいこうよー」ってワインを空けた寿司子が突然言い出したのね。私はプチフォッカでドリアをさらうのに忙しかったから、あーそいえばすぐそこミニストップだったねーうん食べたい…
太陽に向かって吼える蛇。山道。 マラソンランナーのような孤独。 汗が伝ってゆく先を食い止める。その首筋。脈動。 そのリズムとは裏腹に、のんべんだらりと鐘が鳴る。 夕方五時の鐘が鳴る。 反響して、街に降りそそぐ。 そのうちに日没がやってくる。この…
舞台を包み込む透明な幕が上がり、闇の中の役者達が光を得てその輪郭をあらわにする。やがてそれは虹のように鮮やかに煌めき、波打つように動き始め……。 ……何のことはない、朝が来て目が覚め、視界に水縹のカーテンが映っただけである。 低血圧で言うことを…
僕は呪われている。「ほら、見て? 途中で切れないように練習したのよ」 僕一人だけの台所で、僕はピーラーでリンゴを剥く。皮はバラバラになって、シンクに落ちていく。包丁を使わなければ、桂剥きなんて無理だ。僕には一生できそうにない。「切ったリンゴ…
どちらが北だっただろうか。一瞬、そんなことを思いついた。 きっかけは分からない。脈絡も秩序もないのが思考である。 さらに考えを進めてみた。 ここの病院のエントランスは北西を向いている。つまり歩く方向は南東。 右手にあるエレベーター乗って、五階…
ただ そんなふうに 破れた景色も 曇り空も ただじっとそこにあるだけ 最後に震わせた弦をミュートする。和音の余韻が消えるか消えないかのところで、一礼する。十畳くらいの会場は拍手に塗り替えられる。 アンコールは、一曲。なんとなくそう決めている。さ…
これは時間旅行が今ほど規制されていなかったころの話なのだけれど、夏が暮れると、僕は決まって2012年の8月に飛んでいたんだ。 向こうに着くと僕はまず、都心近くで日雇い労働を転々とする。4,5万円ほど稼いだら、朝一番に駅に向かって、なるべく遠くに行け…
カランコロン。カランコロン。 俺の部屋にやって来た夏が、グラスの氷を溶かしながら音を立てる。 ミーン。ミーン。 少し気の早過ぎた蝉が一人部屋の外で淋しさを訴えている。まだ世間は花見だなんだと浮かれているのに俺だけが夏と共にいるようだ。部屋には…
カラフルな果実たちは、いびつな形をその日陰で休めていた。 通りを往く人はまばらで、となり近所のオーナーたちもそれぞれのシエスタを過ごしている。読書に耽る者もいれば、ちょうど片袖を編み終わった者もいる。 客足は凪いでしまった。昼過ぎまでに見知…