2010-01-01から1年間の記事一覧

サン=テグジュペリ著 河野万里子訳『星の王子さま』@Anri

○内容 砂漠に飛行機で不時着した「僕」が出会った男の子。それは、小さな小さな自分の星を後にして、いくつもの星をめぐってから七番目の星・地球にたどり着いた王子様だった…。 (本書裏表紙より) ○感想 言わずと知れた児童文学の名著である。 「僕」がス…

宮本輝『青が散る』@たこのには

【内容】 新設大学のテニス部員椎名燎平と彼をめぐる男友達、女友達。原色のいのち燃える人生の短い季節を急ぎ駆けぬける者、ためらい立ちどまるもの……。青春の光芒のあざやかさ、そして切なさとむなしさを、テニスコートに白球を追う若い群像に描き、テニス…

山本周五郎『新編傑作選4 しづやしづ』@おさひさし

誰かを説得する時、誰かに何かを伝えようとする時、往々にしてその言葉が相手に届かない事がある。相手に話を聞く気がなかったり、話を聞いてもどうにもならなかったり、何か裏があったり。 「蛍と蛇の目は同じように光る」 五千石の武家の子で世間知らずな…

斉藤茂太 『気持ちの整理―不思議なくらい前向きになる94のヒント』@里歩

斉藤茂太(著) 文庫: 203ページ 出版社: 三笠書房 (2003/02) 誰にでも、ふとしたことで落ち込んでしまうことはあるだろう。 そんな時に「自分は駄目な人間だ」とか 「こんなことで悩むなんて」と思うこともあるかもしれない。 しかし、そんな風に自分を責めて…

オノレ・ド・バルザック『谷間の百合』@ゆうゆう

書評 本書はバルザックの代表作の一つであり、彼の初恋とその結末をドラマチックに書き出したものといわれる。バルザックの書くキャラクターは情愛的な本心と偽善的な社会通念の間で板ばさみになり、苦悩して死んでいくが、この作品もその例に漏れない。本書…

渡瀬草一郎『陰陽ノ京』@梅銘花御瑠

【あらすじ】 電撃初の陰陽師ストーリー! 時は平安、家業の陰陽道ではなくあえて文章道の道選んだ青年・慶滋保胤のもとに一人の男が訪れた。男の名は安倍晴明――いわずと知れた天才陰陽師である。 晴明は近頃都の現れたある外法師について調査を依頼しに来た…

犬村小六『とある飛空士への追憶』@小野 茸

あらすじ 「美姫を守って単機敵中翔破、1万2千キロ。やれるかね?」レヴァーム皇国の傭兵飛空士シャルルは、そのあまりに荒唐無稽な指令に我が耳を疑う。次期皇妃ファナは「光芒五里に及ぶ」美しさの少女。そのファナと自分のごとき流れ者が、ふたりきりで海…

西尾維新『クビシメロマンチスト 人間失格零崎人識』@一之瀬霧夢

西尾維新(著) 誰がそれをなしたのか、それだけが問題だ ミステリにおけるカテゴリは様々だが、結局のところここに行きつくしかないというものが1つだけ存在する。 それが「フーダニット」和訳すれば「誰がそれをなしたのか」 言ってしまえば「犯人当て」…

森博嗣『臨機応答・変問自在 ―森助教授VS理系大学生』@草一郎

森博嗣(著) 単行本: 240ページ 出版社: 集英社 (2001/4/17) 著者のユニークな回答が魅力的 著者は、超人気作家であり、元大学教員でもある。彼の専門は建築学であるが、数学や電気電子工学にも詳しく、博学多識な人物である。本書は、そんな知識の泉のよう…

関口尚『シグナル』@黎明

【あらすじ】 映画館でバイトを始めた恵介。そこで出会った映写技師のルカは、一歩も外へ出ることなく映写室で暮らしているらしい。なぜ彼女は三年間も閉じこもったままなのか? 「ルカの過去について質問してはいけない」など三つの不可解な約束に困惑しなが…

服部嗣雄『難問題の系統とその解き方 物理I・II』@たゆな

★あらすじ★ 基礎から実践へ 系統学習による難問題の解明! 本書表表紙より引用 ★感想★ この本は「難系」や「難系物理」と呼ばれていて難関大学を受験する方に愛されています。難易度は非常に高いので、大学入試に向けての最後の演習本となるでしょう。 私は…

知里幸惠『アイヌ神謡集』@秋乃

【内容】「銀の滴降る降るまわりに,金の滴降る降るまわりに」――詩才を惜しまれながらわずか十九歳で世を去った知里幸惠。このアイヌの一少女が,アイヌ民族のあいだで口伝えに謡い継がれてきたユーカラの中から神謡十三編を選び,ローマ字で音を起し,それ…

花村萬月『二進法の犬』@明義 隆通

〔あらすじ〕 家庭教師・鷲津兵輔が、生徒として引き受けることになった女子高生の倫子。彼女の父は、武闘派乾組組長・乾十郎だった。鷲津は、乾組という組織、十郎の「白か黒か」を徹底する生き様、そして倫子の凛とした存在に、次第に自分の所在を見いだし…

今邑彩『ルームメイト』@来八

あらすじ 私は彼女の事を何も知らなかったのか…? 大学へ通うために上京してきた春海は、京都からきた麗子と出逢う。お互いを干渉しない約束で始めた共同生活は快適だったが、麗子はやがて失踪、跡を追ううち、彼女の二重、三重生活を知る。彼女は名前、化粧…

星新一『進化した猿たち』@師父

星新一と言えば、ショートショートで有名だが、それ以外の話をご存じだろうか? この『進化した猿たち』はショートショートどころか小説ですら無い。星新一は一コマ漫画という、日本ではあまり馴染みの無い漫画のコレクターであり、この本は、そんな星新一の…

伊坂幸太郎『グラスホッパー』@麻木

[あらすじ] 「復讐を横取りされた。嘘?」元教師の鈴木は、妻を殺した男が車に轢かれる瞬間を目撃する。どうやら「押し屋」と呼ばれる殺し屋の仕業らしい。 鈴木は正体を探るため、彼の後を追う。一方、自殺専門の殺し屋・鯨、ナイフ使いの若者・蝉も「押し…

筒井康隆『家族八景』@猫町

あらすじ 幸か不幸か生れながらのテレパシーをもって、目の前の人の心をすべて読みとってしまう可愛いお手伝いさんの七瀬――彼女は転々として移り住む八軒の住人の心にふと忍び寄ってマイホームの虚偽を抉り出す。人間心理の深層に容赦なく光を当て、平凡な日…

歌野晶午『ハッピーエンドにさよならを』@六華

[内容] 望みどおりの結末になることなんて、現実ではめったにないと思いませんか?小説の企みに満ちた、アンチ・ハッピーエンド・ストーリー。前人未到のミステリ四冠を達成した偉才が仕掛ける未曾有の殺意。 (本書帯より)[書評] 全十一話の短編からなる本書…

はやみねかおる『少年名探偵 虹北恭助の冒険』@来幸 笑

『少年名探偵 虹北恭助の冒険』は五話からなる短編集です。主人公は古本屋の虹北恭助。語り手は幼なじみの野村響子ちゃん。恭助は小学五年生ですが、学校に行っておらず、一日中本を読んでいます。そんな変わった少年ですが、一番特別なのは名探偵であること…

上田秋成『雨月物語 浅茅が宿』@刹那

[内容] 下総国葛飾郡真間の村に勝四郎という男がいた。生まれついての不精な性格のせいで生活が貧しくなった頃、ふとしたきっかけで京都で一儲けしようと思い立つ。そして勝四郎は、妻の宮木に次の秋には必ず帰ると固く誓い、単身京都へ上った。 都で利益を…

ドロシー・ギルマン『おばちゃまは飛び入りスパイ』@不比

<あらすじ> ミセス・ポリファックスは、アメリカのとあるマンションに住むごくごく普通のおばちゃま。毎日の日課はゼラニウムに水をやること、近所のおばさま方との付き合いやボランティアに明け暮れる毎日だ。 そんなおばちゃまが、ある日突然思いついた…

宮部みゆき『模倣犯』@序二段

【あらすじ】 公園のゴミ箱から発見された女性の右腕。それは「人間狩り」という快楽に憑かれた犯人からの宣戦布告だった。直木賞受賞作『理由』以来三年ぶりの現代ミステリー。 (「BOOK」データベースより) 【書評】 この小説はとても長い。ハードカバー…

神永学『怪盗探偵山猫』@Anri

あらすじ 出版社社長が殺された。容疑者は"山猫"と呼ばれる謎の窃盗犯。世間をにぎわすこの怪盗の信条は、"人を殺めないこと"のはずが、一体なぜ!? ライターの勝村は事件を追い始めるが……!?書評 探偵と銘打ってはいるが、読みやすい文体で数時間もあれば一気…

機本伸司『メシアの処方箋』@ポッケ

【あらすじ】 ヒマラヤで氷河湖が決壊した。下流のダム湖に浮かび上がったのは、なんと古代の「方舟」だった。こんな高地になぜ文明の跡が? いぶかる調査隊をさらに驚愕させたのは内部から発見された大量の木簡。それらにはみな、不思議な蓮華模様が刻まれ…

ヘルマン・ヘッセ『車輪の下』@たこのには

頭脳明晰で精神未分化の少年は、友情や恋情に呑まれて一喜一憂、右往左往。はたまた、勉強のしすぎで頭痛がする。豊かな自然に触れると、幼少の頃を思いだす。けれど、あの頃にはもう戻れない。 主人公の少年は釣りが大好きだが、勉学に時間を取られ釣りをす…

中沢新一『カイエ・ソバージュ 1 人類最古の哲学』@おさひさし

【内容】 宇宙、自然、人間存在の本質を問う、はじまりの哲学=神話。 神話を司る「感覚の論理とは?」 人類的分布をするシンデレラ物語に隠された秘密とは? 宗教と神話のちがいとは? 現実(リアル)の力を再発見する知の冒険。(本書表紙より)【感想】 神話…

【内容】 八年後に小惑星が衝突し、地球は滅亡する。 そう予告されてから五年が過ぎた頃。 当初は絶望からパニックに陥った世界も、いまや平穏な小康状態にある。 仙台北部の団地「ヒルズタウン」の住民たちも同様だった。 彼らは余命三年という時間の中で人…

ロバート・ルイス・スティーヴンソン『ジキル博士とハイド氏』@小野

内容(「BOOK」データベースより) 街中で少女を踏みつけ、平然としている凶悪な男ハイド。彼は高潔な紳士として名高いジーキル博士の家に出入りするようになった。二人にどんな関係が?弁護士アタスンは好奇心から調査を開始するが、そんな折、ついにハイド…

東野圭吾『秘密』@霧夢

東野圭吾『秘密』あらすじ 妻・直子と小学5年生の娘・藻奈美を乗せたバスが崖から転落。妻の葬儀の夜、意識を取り戻した娘の体に宿っていたのは、死んだはずの妻だった。その日から杉田家の切なく奇妙な“秘密”の生活が始まった。 内容(「BOOK」データベース…

岩井志麻子『ぼっけえ、きょうてえ』@草一郎

岩井志麻子(著) 単行本: 220ページ 出版社: 角川書店 (1999/10) 背筋も凍りつく究極の怪談 世の中に公募新人賞はたくさんあれど、日本ホラー小説大賞ほど受賞の難しい賞はないだろう。その証拠に、何年も大賞作が出ていないことなんてざらだ。薄利多売で営…