富樫倫太郎『SRO』@梅銘花御瑠

内容(「BOOK」データベースより)
警視庁刑事部に新設された広域捜査専任特別調査室―別名「SRO」。総勢七名の小所帯だが、室長の山根新九郎以下、調査官全員がキャリアだ。管轄の枠を越えた日本版FBIともいえる花形部署SRO。だが、その内実は曰く付きの部署だった…。そして、設立早々、身元不明の白骨死体が山梨で発見される。川久保警部を伴い現地へと向かう山根には、ひとつの推論があった。それは「ドクター」と呼ばれる連続殺人犯の存在だった―。日本警察組織の限界と盲点を衝いた、前代未聞の凶悪犯罪に挑むSRO調査官たち!その活躍と心の葛藤を描く、新時代警察小説の傑作。

書評
伝奇小説、時代小説の分野で活躍していた著者の初の現代ミステリーである。もっとも、架空の特別捜査班という発想は、決して新しいものではない。そのメンバーもそのほとんどは過去に問題行為を起こしていたり、何らかの欠点を抱えていたり、特別捜査班に集められるだけの強烈な個性を持つ者が顔を揃える。しかし、そんなマンネリ化しそうな設定でありながら、単なるキャラクター小説化にも陥らず、徐々にシリアルキラーの正体へと迫ってゆく海外サスペンスを彷彿とさせる緊張感のある展開をみせている。また、そういった捜査に関わる緊迫した章段と挿話的に出てくるメンバーの交流との緩急もよい。現在三巻まで刊行されているが、今後もシリーズとしての広がりが期待される。