野村美月『文学少女と飢え渇く幽霊』@祈灯愁


あらすじ
文学少女部長・天野遠子。物語を食べちゃうくらい愛しているこの自称”文学少女”に、後輩の井上心葉は振り回されっぱなしの毎日を送っている。
そんなある日、文芸部の「恋の相談ポスト」に「憎い」「幽霊が」という文字や、謎の数字を書き連ねた紙片が投げ込まれる。
文芸部への挑戦だわ! と、心葉を巻き込み調査を始める遠子だが、見つけた”犯人”は「わたす、もう死んでいるの」と笑う少女で――!?
コメディ風味のビターテイスト学園ミステリー、第2弾!
(本誌裏表紙のあらすじより)

書評・感想(ネタバレ注意)
今回の作品は幽霊ということで少しホラー要素がある……と思いきや、あまりないなと思いました。
話の構成については前作と同様に、主人公井上心葉視点の物語本編にある人物の一人語りが部分的に挿入されている形となっています。
この『文学少女シリーズ』では一人語りの部分が誰がどういう意味で独白をしているのかを考えていくのがまた面白いです。
それを知った上でもう一度読み直すと、また違った話に見えて二度楽しめる作品となっています。
物語に関してはあらすじの通り、ポストに謎の紙片が届くところから始まります。
幽霊の正体を掴むまではよかったのですが、遠子は心葉と一緒にその子について調べる気満々。でも試験勉強が忙しいということで心葉は遠子と一緒に探さずに放置します。
その後の展開は遠子の弟・流人がその子のことが気になり、心葉は結局二人で調べることに。そのうち大人の重い事情が絡んできて――。
学園というジャンルにも関わらず、人間模様の重い話について追及していく一風変わったものとなっています。
悲しい物語の最後の最後にちょっぴり救われる部分がいいです。
もちろん、学園ものとして王道の恋愛模様もありますし、今作品でも詳しくは語られていない主人公のトラウマについても書かれています。
『遠子姉の作家』という今後重要そうな単語まで出る始末……そういったところでも、次回作が気になります。
私としては、主人公にもっと前向きに行動してほしかったな、という想いはありました。
前作の最後では主人公の光る部分がありましたが、今作では受動的な行動が多かった気がします。
情報収集も流人や麻貴先輩に任せきりあり、たまたま犯人と会う機会が多かったために何とか真実にたどり着けますが。
主人公として行動していたのはどちらかというと流人だった気が……。
そして今作品で主に取り扱ったのは『嵐が丘』という作品です。
この作品と今作品との絡み具合が何とも言えません。すばらしいです。
嵐が丘』を読んでから今作品を読んでみるのも一つかもしれません。

以上で感想を多く含んだ書評・感想を終えたいと思います。
ここまで読んでくださった方々、ありがとうございました。