お題『墓』『赤い』『バラ』@さきん

「久しぶりね、ライザ」
真っ白な墓石に刻まれたライザの名前を指先でなぞる。


「……もう五年も経つのね」
なぞった手の薬指のダイヤが夕日で美しく輝いていた。


「あのね、私ライザのお兄さんと結婚することになったの」
だからね、今とっても幸せなのよ。ライザ、本当よ?


「来月には式を挙げる予定なの。楽しみだわ」
だからライザも祝ってちょうだい。あなたが祝ってくれないなんて、幸せじゃないもの。


「あら……もう帰らなくちゃ」
皆にだまって家を出てきちゃったもの。遅くなると心配されてしまうわ。


「ライザ、今日のことは秘密よ」
誰かさんに手向けられた赤いバラの花束のことも、全部ね。