湊かなえ『告白』@草一郎


湊かなえ(著)
単行本: 268ページ
出版社: 双葉社 (2008/8/5)
発売日: 2008/8/5




いったい誰が悪いのか


 ある女性中学教師の娘が水死体となって見つかった。発見された場所は学校のプール。警察は事故死として処理したが、彼女はそれに納得できなかった。ひとり事件について調べ始め、真相を突き止める。そして教職を辞すると決めた終業式の日。彼女は教え子達に事件の真実を明かした。

「愛美は事故で死んだのではありません。このクラスの生徒に殺されたのです」

 教壇で話し始めた彼女は次に、匿名でふたりの生徒について語り始める。「殺意はあったけれど直接手を下したわけでないA」と「殺意はなかったけれど直接手を下すことになったB」。この二人の手によって娘の愛美は殺されたのだと。誰が犯人か分かっている彼女は、しかし、彼らの罪を世間に問わなかった。代わりに彼女は二人の少年にある「裁き」を下す。

 ここまででも十分に惹きつけられる。冴えわたる文章。重みのある内容。驚愕のオチ。どれをとっても新人のものとは到底思えない。しかし、この物語の「すごさ」はこれだけではなく、これ以後も続く。一章以降、事件に関係のある人物の「告白」が章を隔てて連ねられ物語は進展、そして最後は――。

 様々な視点により見えてくる事件の真相。それは、あまりに奥深く、頭を悩まされるものである。いじめや犯罪の低年齢化、理不尽な要求を繰り返す保護者、理想主義の教師たち。学校という場所は数多くの問題を抱えているところだ。ではその原因とは何なのか。それは、我々が自己中心的な生き方をしているからではなかろうか。他人のことを顧みなかったり、自分の価値観を他人に押し付けたり、自己満足のために行動したり。そういった身勝手な生き方が社会をゆがめていくのではないか。そう思えてならない。

 いつからこうなってしまったんだ。そして自分は何ができるのか。読んでいる中で何度もそう、考えさせられた。


あらすじ
 愛美は事故で死んだのではありません。このクラスの生徒に殺されたのです。我が子を校内で亡くした女性教師が、終業式のHRで犯人である少年を指し示す。ひとつの事件をモノローグ形式で「級友」「犯人」「犯人の家族」から、それぞれ語らせ真相に迫る。