有川浩『レインツリーの国』@莉麗

【あらすじ】
きっかけは「忘れられない本」そこから始まったメールの交換。
あなたを想う。心が揺れる。でも、会うことはできません。ごめんなさい。
かたくなに会うのを拒む彼女には、ある理由があった―。
(「BOOK」データベースより)


【感想】
気づけば読み切っている、そして、リアルな小説だと思います。


ネット上で知り合い、メールのやりとりを繰り返すうちに恋へ発展するという設定。
それが、ありそうな、ありえなさそうな、っていう絶妙なラインをついているんです。
さらに、有川さんの使う言葉。
ネット用語など、ちょっと年配の人だと分からない言葉とか、ネット文化に疎い人が知らない表現が満載。
携帯小説ほどではありませんが、結構砕けた表現も多いんです。
でも、それが本当に自然に流れていく。
地の文だけでなく、会話におけるテンポ、リズム、そういったものもすべてひっくるめて、自然。
だからこそリアル。より伸とひとみを身近に感じられ、物語に引きこまれていく。
そして気づいた時には、読み終えてるんです。


また、これは「健常者と聴覚障害者の恋」を描いていることに触れておきます。
そうだからこそ伝わってくるものがあると思います。




『無意味に見えるのは自分の立場から見るからで、それが必要な人がいるということを突き詰めて考えたことがあったのか』(本文より抜粋)




世の中に耳に障害を持つ人がいるということは知っていても、それを範疇に入れてものごとを捉えられない。
私は、自分の立ち位置からしかものごとを考えられていない。相手を目の前にしていても、相手がどういう立場にいるのかにまで考えが及ばない。
相手も当然自分と同じ立ち位置に居るのだろう、と勝手に決め付けてしまう。
自分にもそういう一面があるよね、と気づかされます。そしてドキリとするんです。


この本を読んで感じられること、知れることは沢山あると思います。
読みやすい本ですので、本は苦手という人にもオススメです。