久住四季『トリックスターズ』@白影 ポッケ

【あらすじ】

 その魔術師はにぃと笑った。ゲームねぇ、なかなか面白そうじゃないか――。
 ゲームと称する、その予告は大胆にして唐突なものだった。『我は、今この会場内に集まった諸君の中から生贄を選定し、処刑することをここに宣言する』と。不可解な予告ははたして真実となったとき、舞台となる城翠大学は混乱の渦へと落下していく。加速する猜疑、恐怖、狂乱。だが、美しき女魔術師は、巧妙なる欺計(トリック)を鮮やかにそして皮肉げに解き明かす。そしてゲームは誰もが予期せぬ結末へ。
 これは推理小説(ミステリ)を模った魔術師の物語――トリックスターズ登場!
(本書裏表紙より)


【書評】

 どちらかと言えばミステリにどっぷりとはまってしまっている人にはあまりお勧めしない。どんなこともあまり気にしない私でさえ物語に少し矛盾を感じてしまうからだ。けれどそういうことを気にしないならばお勧めの一作である。出てくる登場人物はみな現実にいそうな性格していて、誰かには必ず感情移入して読んでいくことができるだろう。トリックはどれも今までにないような斬新なもので、かつ作品のいたるところにトリックを見破るためのヒントが巧妙に隠されていて、真実を知って読み直したときに、あぁ、ここか、と思えるようになっている。


 わかる人にはわかると思うが、この作品はライトノベルである。しかし、ライトノベルだからと言って読むことを止めずに、一度読んでみてほしい。


 最後にこの作品を一言にまとめると、作者の言っているように『ミステリを模った魔術師の物語』となる。私は筆者も上手く言ったものだとつくづく思う。