あらすじ

江戸は上野の小さな神社で神宮と務める、のんびり屋の兄・弓月としっかり者の弟・信行。夢に入って過去や未来を見る「夢告」が得意な弓月だが、迷い猫を探せばとっくに死んで骨になった猫を見つけるという具合で、全く役に立たないしろもの。が、何を見込まれたか、大店の一人息子の行方を見てほしいという依頼が!礼金に目が眩み、弟をお供に出かけたものの、事態は思わぬ方向に転がって……。大江戸・不思議・騒動記!
(本書裏表紙より)


感想
しゃばけ」シリーズでおなじみの畠中恵の著書だけあって、ファンタジー色の強い推理物となっている。
推理とファンタジーというのは、そもそも相容れるのが難しいものだ。
推理の根本には確固たる物理法則が存在せねばならず、それを覆すことのできるファンタジー要素は、使い方を誤ればすぐに推理部分を食いつぶしてしまう。
本作では、その兼ね合いがまさに絶妙なバランスを保っていると言えるだろう。
推理部分に重きを置きつつ、著者らしいファンタジーが、でしゃばりすぎず、かといって紛れてしまうことなく、推理物として読み応えのあるように配置されている。
かといって、本格推理物のように敷居の高いイメージの作品ではなく、主人公やその周辺人物の役柄がある種のライトノベルのようなとっつきやすさを演出しており、非常に読みやすい小説だ。
厚さ、内容ともに電車の中で読みたい一冊。