星新一「未来いそっぷ」@Anri

あらすじ<アリとキリギリス><ウサギとカメ>など、誰でもごぞんじ寓話の世界。語りつがれてきた寓話も、星新一の手にかかると、ビックリ驚く大革命。時代が変われば話も変わるとはいえ、古典的な物語をこんなふうに改作してしまっていいものかどうか、ちょっぴり気になりますが―――。
表題作など、愉しい笑いと痛烈な風刺で別世界へご案内するショート・ショート33編。
(本書裏表紙より)


書評
誰もが一度は目にしたことのあるイソップ物語を、星新一ならではの視点でアレンジした二次創作。
イソップ物語元々社会風刺の強い作品なだけあって、星新一の筆致と非常に相性が良いようだ。どのSSにしても、星新一らしさが存分に発揮されている。ただ発揮されすぎて、元がイソップ物語である必要性に疑問を抱くような話もいくつかあるが。
表題作が寓話を元にしているだけあって、他のSSも、シンデレラやサンタクロースなどメルヘンチックな題材のものが多い。とはいえ、話の落ちはブラックジョークの効いた、メルヘンとは程遠いものばかりだ。
題名だけ見て本を買うような人がいれば、内容を知ってさぞ驚くことだろう。本書を一言で形容するとすれば、タイトル詐欺というのが適切かもしれない。星新一の名を知る人間であれば、ただの寓話のアレンジで終わる訳がないというのは、容易く予想がつくのだが。
いずれにせよ、最初から最後まで良くも悪くも「星新一」を貫いた作品である。