道尾秀介「龍神の雨」@黎明

【あらすじ】
人は、やむにやまれぬ犯罪に対し、どこまで償いを負わねばならないのだろう。
そして今、未曾有の台風が二組の家族を襲う。最注目の新鋭が描く、慟哭と贖罪の最新長編。(「BOOK」データベースより)

【感想】
 大藪春彦賞受賞作。

 長雨が続く梅雨の時期を舞台に、家族構成が似通った二組の兄弟に降りかかる事件を描いた作品。ひと続きの物語のような各章タイトル、ところどころで挿入される龍に関する喩え話など雰囲気の作り方がとても上手で読みはじめたらすぐに没頭してしまった。

 物語は冒頭から続く長雨に象徴されるように、暗く、じめじめした話である。けれどそこは道尾秀介らしく丁寧な心情描写や細かな伏線、そして中盤で見事に反転する物語構成のおかげで一気に読んでしまった。読み手の想像にまかせるようなラストも良い。

 ただ「向日葵の咲かない夏」のようなトリッキーさも「カラスの親指」のような後味の良さもなく、良く言えば堅実な、悪く言えば地味な話なので、その辺は合う合わないがあるかもしれない。