ロバート・ルイス・スティーヴンソン『ジキル博士とハイド氏』@小野

内容(「BOOK」データベースより)
街中で少女を踏みつけ、平然としている凶悪な男ハイド。彼は高潔な紳士として名高いジーキル博士の家に出入りするようになった。二人にどんな関係が?弁護士アタスンは好奇心から調査を開始するが、そんな折、ついにハイドによる殺人事件が引き起こされる。



感想
ネタバレを含みますが、ご容赦ください。






二重人格ものの古典、と言って差し支えないだろう。訳者の好みはあるだろうが、それでも文章に吸い込まれていってしまう作品である。
物語は淡々と進んでいくが、それでも拭いきれない嫌悪感を感じることができる。ジーキルとハイド。まったく違った2人がどのようにかかわっていくのか。アスタンとラニョンが同級生のジーキルにどのように絡んでいくのか。自分で予想しながら読んでも面白いし、結末を知ってから読むのも面白い。人が抱く「悪」へのあこがれ。それを一切受け入れたハイド氏の思考はある意味人間のいきつく極地でもある。ありがちな「悪」ではなく、たんなる「悪」であるところに筆者の筆力、構想力を感じることができる。