星新一『進化した猿たち』@師父

 星新一と言えば、ショートショートで有名だが、それ以外の話をご存じだろうか? この『進化した猿たち』はショートショートどころか小説ですら無い。星新一は一コマ漫画という、日本ではあまり馴染みの無い漫画のコレクターであり、この本は、そんな星新一のコレクションの中から星新一が自分で決めたテーマに合ったものを紹介していく、という形式で書かれている。

 四コマ漫画には起承転結があるが、一コマ漫画にはそんなものはない。シンプルでストレートなエスプリ、ブラックユーモア。それが一コマ漫画である。感覚的には風刺画に近いかも知れない。

 正直な話、一コマ漫画は一つ一つでは少々物足りないところがある。しかし、この本ではそんな一コマ漫画が次から次へと示され、物足りなさは感じられない。ページの数ほどの一コマ漫画、そして星新一ならではの淡々とした説明が、読者にショートショートを読んでいるかのような錯覚を与えるのだ。

 一度じっくりと読んだ後、もう一度一コマ漫画だけを眺めてみるのも面白い。『進化した猿たち』は三巻まで出ており、載っている一コマ漫画の種類も多く、何度読み返しても飽きが来ない作品だ。