犬村小六『とある飛空士への追憶』@小野 茸

あらすじ
「美姫を守って単機敵中翔破、1万2千キロ。やれるかね?」レヴァーム皇国の傭兵飛空士シャルルは、そのあまりに荒唐無稽な指令に我が耳を疑う。次期皇妃ファナは「光芒五里に及ぶ」美しさの少女。そのファナと自分のごとき流れ者が、ふたりきりで海上翔破の旅に出る!?―圧倒的攻撃力の敵国戦闘機群がシャルルとファナのちいさな複座式水上偵察機サンタ・クルスに襲いかかる!蒼天に積乱雲がたちのぼる夏の洋上にきらめいた、恋と空戦の物語。

(「BOOK」データベースより)


感想

読後感が素晴らしい。作者自身が公言しているように、この作品は「ローマの休日」と「天空の城ラピュタ」を感じさせる作品である。切なさと爽やかさ。その両方を感じることのできる作品である。

話は変わるが、私はライトノベルが大好きである。しかし、私はライトノベルに「深さ」は求めていない。
もちろん、お話としての「深さ」ならば大歓迎であり、垂涎ものなのだが、ライトノベルの一番の利点であり、売りでもある「軽さ」を無くしてしまっては意味がないのである。
もちろんそういう需要がないわけでもない。しかし、大多数のライトノベル読者が求めているのは安心して読める「軽さ」なのである。

誰が好き好んでライトノベルで人が壊れていく様を見たいだろう。誰が好き好んでライトノベルで苦悩する人が挫折する様を見たいだろう。そんなもの純文学にでもくれてやればいい。いっそ漫画のほうがその様をうまく描写できるだろう。

「私ももっと考えなきゃ」とか「自分はだめだなぁ」と思ってしまう作品も世の中にはたくさんある。しかし、それらをライトノベルに期待するのは酷というものだし、誰も求めていないのだ。

漫画や純文学と比べてどっちが上だとかどっちが下だとかつまらない比較をするつもりもない。ただ、どのジャンルにも得手不得手はあるということだ。


この作品を読み終わって感じるのは切なさと爽やかさ。それだけだ。これがいいことなのかわるいことなのかは分からない。しかし、私はこの作品はきれいな作品であると感じた。

きれいだ、と感じたから私はこの作品をお勧めしたい。