新堂冬樹『吐きたいほど愛してる。』@六華

内容(「BOOK」データベースより)
迷惑な妄想逆ギレ男が、夫の帰りを正座して待つ壊れた妻が、生き地獄を味わう可憐な美少女が、虐待される寝たきり老人が、自己の中心で愛を叫ぶ!勝手気ままに狼藉の限りを尽くす面々をあなたは愛せるか!エンターテインメントの旗手・新堂冬樹が「ここまで書くか!」とばかりに練り上げた、強烈すぎるキャラクターと刺激的なストーリー。


[書評]


 吐きたいほど愛してる。
 というタイトルから推測し、どんなに深く一途な愛がそこでは語られているのかと本書を読む前に考えていました。ですが、頁を捲りわずか数行を読んだ時点で気付きました。
 あ、違うな、これは読んでて気分が悪くなるやつだな、と。
 四つの短編からなる本書ですが一部を除き、結局愛情の向かう先は自分自身。人間らしい傲慢な自己愛に満ちた作品だと感じました。

 読んでいる途中はとにかく気持ちが悪くなります。吐きたいのはこっちだよ! と突っ込みたくなるぐらいにです。どれもリアリティには欠けたお話ですが、細かい描写により想像したくもない映像が頭の中で再生され、小説から悪臭が漂ってくるようでした。特に虫の表現なんかは、虫嫌いの人にとっては堪ったもんじゃないしょう。それこそ、読んでいて虫唾が走りました。
 十分気持ち悪いのに、先のもっと酷い展開を求めて頁を捲る手が止められなくなってしまいます。ですが、読み返す気にはなれません。

 また四作中、唯一の救いとされる切ない恋慕のお話がありましたが、個人的には他と比べると物足りなく感じてしまいました。純愛小説も書かれる作者ですが、こういったどうしようもなく残酷なお話こそ作者の世界観が存分に発揮されているように思います。


 食事前に読むのはおススメできませんが、気持ち悪くなりたい人は是非。