山本文緒『プラナリア』@猫町

あらすじ

 どうして私はこんなにひねくれているんだろう――。乳がんの手術以来、何もかも面倒くさく「社会復帰」に興味が持てない25歳の春香。恋人の神経を逆撫でし、親に八つ当たりをし、バイトを無断欠勤する自分に疲れ果てるが、出口は見えない。現代の“無職”をめぐる心模様を描いて共感を呼んだベストセラー短編集。直木賞受賞作品。

感想

 とにかく屈折した女性の描写が秀逸。どうにも人生にやる気がないように見える彼女たちは、読んでいてイライラして不快な気分にもなるけれど、同時に共感させられる部分もありました。そして自分にも彼女たちのようなところがあるのだと気付き、はっとさせられました。

 表題作の「プラナリア」では、乳がんになってしまい乳房を切除した女性が出てきます。ある時、彼女は酒の席で「生まれ変わったらプラナリアになりたい」と言います。プラナリアというのは二つに切っても再生して二匹になるような生き物のことで、もしプラナリアだったら取った胸も生えてきてよかったのになあ、と言っているんです。こういう露悪的な発言をしてしまう人が主人公で、一冊ずっとこんな調子で話が進みます。

 この小説を読んで「ムカつくから嫌い」って思う人もいるんでしょうけれど、僕にとってはムカつくからこそ心地よく、気持ち悪いところが素晴らしいと思えました。