野崎まど「パーフェクトフレンド」@ゆうゆう

≪あらすじ≫周りのみんなより、ちょっとだけ頭がよい小学四年生の理桜。担任の千里子先生からも一目置かれている彼女は、ある日、不登校の少女「さなか」の家を訪ねるようにお願いをされる。能天気少女のややや(注:「ややや」で名前)や、引っ込み思案の柊子とともに理桜は彼女の家に向かうが、姿を現したさなかは、なんと早々に大学での勉学を身につけ、学校に行く価値を感じていない超・早熟天才少女であった。そんな彼女に理桜は、学校と、そこで作る友達がいかに大切であるかということを説くのだったが……果たしてその結末は!?
 野崎まどが放つ異色ミステリ、まさかの小学校編登場!(メディアワークス文庫公式サイトより)

 作者の書いた小説の文章密度や練り込みは取り立てて優れているとは言えないがテーマ設定がいつものように面白い。この作者はいつも事実の引き合いを書き出し、相反している二つの事実から想定外の結末を引き出してくる(弁証法的手法だが作者が意識しているかはわからない)。本作は四作目だが、デビュー作アムリタの殺伐さが薄れ、より本当に書きたいことが書かれている。この作者は幼年時代や青春にかけて見られる、暖かい愛や思いやり、胸をすく感動や喜びを書きたいのだろう。優れていると言えるのは、それと同時に抗いがたい生理的原因による愛情の否定を認め、感動も喜びもプログラム的思考であってただの反射に過ぎないものと仮定した上で、二律背反からの真理を導くことだ。
 本作の人物は小学生で、小学生はどのように生きて育つべきか。この小説のコンセプトはそう言い表される。疑いようの無いものはそこにある。それこそが幾重の嘘と盲目の荒野を抜けた先に輝く、永遠の宝物。本作の最後に書かれる三行は眩しい光を秘めている。
 ただ、この作品の論理はいくらなんでも無理すぎる。おそらく児童文学をオマージュしたため全体的に無理がでたと思われるが、もう少し読んで素直に納得できる規模に収めて欲しいと思う。