高野和明『13階段』@来八

あらすじ
無実の死刑因を救い出せ。期限は3ヵ月、報酬は1000万円。喧嘩で人を殺し仮釈放中の青年と、犯罪者の矯正に絶望した刑務官。彼らに持ちかけられた仕事は、記憶を失った死刑囚の冤罪を晴らすことだった。最大級の衝撃を放つデッド・リミット型サスペンス!第47回江戸川乱歩賞受賞作。(「BOOK」データベースより)

感想
読むタイミングを逃し続け、本棚の肥やしとなっていたこの小説を一念発起、棚から引っ張り出して読んでみたが非常に面白くて今まで読んでいなかったことを少し後悔した。本の先が気になって徹夜したのは久しぶりだ。この13階段のせいで長期休暇中辛うじて保っていた私の規則正しい生活リズムはがらがらと音を立て崩れ去った。
設定からして「おっ、これは!」と思わせるものがあり良作の匂いを感じさせるものだと私は思う。さらには江戸川乱歩賞の受賞作というのだから胸中の期待は最早天井知らずであったが、そのハードルを見事に超える小説だ。
読み終わってから改めて振り返ると随分練られた小説だという感想が浮かぶ。過去に起こった事件、複雑に絡まった糸を少しずつほぐしていき、解いていく過程が非常に丁寧である。最後が急過ぎるのではないかしらと思いもしたが、それがラストスパートの疾走感を演出するのに一役買っているのだろう。また、硬く味気ない文体も内容に合っていて良い。
本当によく出来た話であるのに加え、刑務官である南郷が語る話も興味深く、死刑や現在の法律に対して考えさせられる。
読む価値が十二分にある小説だと思うので、ミステリ小説が好きな方読んでみてはいかがか、と私は言いたい。
が、今一度この書評を読み返すと私の煽り癖により若干ハードルを上げ過ぎている気がしなくもない。勢いで書いたは良いものの流石に持ち上げ過ぎたかもしれない。
もし私の書評を通して、この小説を読もうと思われた奇特な方がいらっしゃれば、他のレビューサイトなども参考にした方がよろしいかと思われる。