米澤穂信『愚者のエンドロール』@序二段

【あらすじ】
「折木さん、わたしとても気になります」文化祭に出展するクラス製作の自主映画を観て千反田えるが呟いた。その映画のラストでは、廃屋の鍵のかかった密室で少年が腕を切り落とされ死んでいた。誰が彼を殺したのか?その方法は?だが、全てが明かされぬまま映画は尻切れとんぼで終わっていた。続きが気になる千反田は、仲間の折木奉太郎たちと共に結末探しに乗り出した!さわやかで、ちょっぴりほろ苦い青春ミステリの傑作。
(「BOOK」データベースより)

【書評】
 米澤穂信の通称「古典部シリーズ」第二弾。長すぎず、短すぎず、そして構成が素晴らしい。前作ではややぶつ切り感があるとも言われていた日常の謎を繋ぎ合わせる構成も、今回も形式的には踏襲しながら一つの事件に対する複数の推理、解釈といった筋立てで読む者を飽きさせず、引きこんでくる。真相はびっくり仰天、というものではないがこの事件自体の真相と文字通りの舞台裏の真相を明かす二段構えの妙で鮮やかに見せている。終盤のテンポの良さが結末の苦味をピリッと引き締まったものに抑えているのが良い。舞台の表と裏の鮮やかな切り替えを見せられたようだった。
 「わたし、気になります」と言いたい点を挙げるとすれば、やはり構成に無駄がないゆえに中盤にかけてやや単調とも言えなくはないところ。終盤は鮮やかなネタばらしながら、懊悩が少ないゆえに残酷ながらやや淡泊とも言える。くどくないことが主人公の「灰色」を表しているとも言えるが。それにしても、推理小説特有の論理性への偏重で失敗する奉太郎と実際を生きる人物への好奇心で真相に寄り沿うえる。二人の「愚者」のエンドロールは見事。