青柳碧人『浜村渚の計算ノート』@ぽっけ

【あらすじ】
「数学の地位向上のため国民全員を人質とする」
 天才数学者・高木源一郎が始めたテロ活動。彼の作った有名教育ソフトで学んだ日本人は予備催眠を受けており、命令次第で殺人の加害者にも被害者にもなりうるのだ。テロに対抗し警視庁が探し出したのは一人の女子中学生だった!新時代数学ミステリー!!
(本書あらすじより)

【書評】
 こういうことを言うと筆者に失礼かもしれないが、本書を読んで最も印象に残ったのは目次に現れる数学用語だった。自然対数 log(ログ) や累乗根√ (ルート) が出てきて、数学が好きな者にとっては物語に期待を寄せてしまうだろう。
 そういう人たちは物語を読み進めていくと、がっかりしてしまうかもしれない。なぜなら、物語の中に定理や公式、命題の証明がほとんど出てこないからだ。数学が好きで、数学を物語を通して解説してくれることを期待している人にとっては期待外れと言えるだろう。
 しかし、そうでない人にとっては、数学の神秘や不思議、そして面白さを教えてくれる一冊になっているだろう。数学以外は全く普通の女子中学生・浜村渚が、数学を通してテロ集団黒の三角定規と対決するのだが、四色問題フィボナッチ数列などがトリックに使った事件を浜村渚が他の者にはない考え方で解決していくのが非常に印象的だ。また、浜村渚の数学に対する真摯さと愛情には、著者の数学を愛する気持ちが見える。
数学に興味を持ち始めた人におすすめしたい一冊である。