浅井ラボ『されど罪人は竜と踊る Dances with the Dragons』@ぽっけ

【あらすじ】
咒式。それは、作用量子定数h を操作し、局所的に物理法則を変異させ、TNT 爆薬や毒ガスを生み、プラズマや核融合など途方もない物理現象を巻き起こす方程式。咒式を使う攻姓咒式士である二人、不運を機転で乗り切ろうとするガユスと、美貌だが残酷な剣士であるギギナ。<異貌のものども>や賞金首を追う彼らは、エリダナの街に交錯する<竜>との戦いや大国の陰謀に巻き込まれる。
(本書あらすじより)


【書評】
 戦闘シーンの圧倒的なスピード感と主人公ガユスとギギナのアップテンポなやりとり。450 ページ超とかなりの分量がある文庫本だが、ついつい一気に読み終えてしまいそうになる一冊だ。
 作用量子定数の操作など、理系的な用語が多く、避けたくなる人がいるかもしれない。しかし、設定がよく作り込まれているのでかなり読みやすく、化学式などを流してしまえば専門的な知識がなくともしっかりと読み進められるだろう。物語の構成も非常に上手く、様々な伏線がそれぞれ物語の最後に収束されて最後の展開に繋がっていていくのは見事の一言である。
 一つだけ問題があるとすれば、それは作品全体に流れる鬱々とした雰囲気だろう。最後にしてもハッピーエンドには程遠い。世界の負の部分を凝縮したような内容になっている。コメディのような主人公のやりとりもあるが、もちもんほとんどがとんでもない悪口の応酬である。
 その欠点さえ気にしないならば、是非ともおすすめしたい作品である。