加納朋子『てるてるあした』@祈灯愁

あらすじ
親の夜逃げのため、ひとり「佐々良」という町を訪れた中学生の照代。
そこで彼女が一緒に暮らすことになったのは、おせっかいなお婆さん、久代だった。
久代は口うるさく家事や作法を教えるが、わがまま放題の照代は心を開かない。
そんなある日、彼女の元に差出人不明のメールが届き始める。
その謎が解ける時、照代を包む温かい真実が明らかになる。
(本誌裏表紙より)

感想
この本を読み終えた時、日々の見方が変わりました。
いや、懐かしかったと言うべきなのかもしれません。
照代は不幸な中学生をして登場します。
くじけては奔走し、一歩ずつにではあるにせよ、成長していく姿はほほえましいです。
素直に読めばこれから照代は素晴らしい人生を歩んでいくんだなと思いますが、見方によってはこれからが正念場で過酷な道を頑張っていく風にも捉えることが出来ます。
結局は母親とは和解したみたいになっていますが、状況は一向に変わらず最悪で、一年遅く高校生を迎えることになります。
しかし、照代にとってその一年はかけがえのない一年になったんではないでしょうか。
社会の厳しさを知り、その中でもある地域の優しさを知り、母親の本当の思いも知ることが出来ました。
そしてなにより、大切な人がいなくなる悲しみを知りました。
私は思い入れが強い大切な人がいなくなる悲しみはまだ味わっていないですが、それがあれば日々の関わり合いを大切にするのではないかなあと想像します。
本というのは読む年代によって捉え方や感じ方が変わってきますが、この本は特に印象が変わりやすい本だと思いました。
中学生が高校生に上がる際に、上がれず過ごした日々が主となっています。
一つ一つの出来事はたいして大きな事件もなく日々は流れていくのですが、その一つ一つに対する思い入れがあるのがわかります。
特に差出人不明のメールにある言葉は、意味深に見え、考えれば考えるほど意味を持つ言葉になるところが素晴らしいです。
展開はある程度想像した通りでしたが、退屈せずに読めたのはほのぼのと温かい日常があったからではないのでしょうか。
そんなこともあり、小学生や中学生が読めば、いろんな見方に気付くかもしれませんし、私みたいに大学生が読むと懐かしさもあります。
私には妹や弟がいるのですが、ぜひぜひ進めたい作品の一つとなるでしょう。
この温かさは読まないといまいち伝わりずらいと思うので読んでみてください。

最後にここまで読んで下さりありがとうございました。