北山猛邦『ダンガンロンパ霧切』@刹那

あらすじ
謎の依頼を受け集結した五人の探偵たちを待ち受けていたのは「犯罪被害者救済委員会」が企む『黒の挑戦』を通じた連続探偵殺人事件の幕開けだった…!原作ゲーム『ダンガンロンパ』のシナリオライター・小高和剛からの直々の指名を受け、「物理の北山」こと本格ミステリーの旗手・北山猛邦が描く超高校級の霧切響子の過去―。これぞ“本格×ダンガンロンパ”。(「BOOK」データベースより)


感想
ダンガンロンパ』というゲームに登場する霧切響子に関するスピンオフ作品です。しかし一人称は霧切響子ではなく、五月雨結というオリジナルキャラクター。ゲームの世界観を踏襲した普通のミステリでした。かなり浮世離れした世界観に、特殊な舞台、それらに反して小さくコンパクトにまとまった比較的現実的なトリックがバランスよく面白かったです。ただ、霧切響子というキャラクターを用いる必要があったのかは疑問です。
今作は世界観の導入編なのでしょうか、寄り道もなく事件自体もかなりあっさりとした印象ですが、ラストの次巻への引きがよく、ついつい次巻へと手が伸びてしまいました。
途中、原作の存在を忘れてしまうほどしっかりした独自の世界観を持った本格ミステリで、原作を感じたのは描写のグロさと設定のトンデモ感くらい。求められる事前知識は一切なく、ゲームを知らない方も本格ミステリとして問題なく楽しめる作品だと思います。また逆に、トリックはかなり正攻法で、ヒントも多く難易度がそれほど高くない上に、量もそれほど多くなく、たいへん読みやすいので、ゲームから入った本格初心者の方も楽しめます。どんな動機で読みだしても楽しめる一冊でしたので、興味があれば御一読ください。