イアン・ローレンス『The Wreckers』@窪屋

あらすじ
呪われた村に隠された秘密とは?
ほんとうの犯人は?
ラストのどんでん返しまで目が離せない本格冒険ミステリー
(本誌帯より)


感想・書評
小説のなかでも人気のジャンルの一つである冒険小説。この作品はその冒険のスリルを主人公と共に味わえる作品だと思います。
物語は18世紀のイギリス。父と航海に出ていた主人公のジョンは家のあるロンドンへの帰り道で嵐に遭うことになります。そして二人の乗る船は導かれるようにして岩礁にぶつかり難破してしまいます。運よく助かったジョンでしたが、打ち上げられた岸で難破屋たちが生き残りを殺していることを目撃してしまい、自らも彼らに命を狙われることになります。彼らから逃げるためジョンは丸太要塞に飛び込みますが、そこで出会った足のない怪しい男によって父が生きていることを知ります。しかし、逆に彼らに突き出されてしまい、命の危機に瀕します。間一髪のところで現れたサイモンに助けられるも、ジョンにはその男も信用できないように思えました。誰を信じ、何を頼りにすればいいのか分からない状況で、ジョンは隠された謎を解明し父を助けるため、サイモンの姪であるメアリーと共に奔走します。
一人称で書かれたこの作品は、主人公の悩みや意志、恐怖、迷いなどの感情がありありと描かれています。そのため読者が主人公と共に冒険をしているように味わうことが出来ると思います。また心象描写だけでなく風景の描写もしっかりと描かれており、読むだけで情景を思い浮かべることが出来ます。この点も読者が主人公の冒険をリアルに感じることが出来る要因の一つだと考えます。
冒険のスリルを感じるもよし。物語に隠されたさまざまな真実の欠片を、ジョンと一緒に解明していくもよし。この作品は何度も読める作品だと思います。ティーンズ向けの読みやすい文章で、長さも三時間ほどで読める内容です。気軽に読めるものなので、興味があればぜひ読んでいただきたいと思います。そしてジョンの冒険に引き込まれたなら、続編である『The Smugglers 死をはこぶ航海』『The Buccaneers 闇にひそむ海賊』もぜひとも読んでいただけたらなと思います。