竹内一郎「人は見た目が9割」@江乃本

あらすじ
顔つき、仕草、目つき、匂い、色、温度、距離等々、私たちを取り巻く言葉以外の膨大な情報が持つ意味を考える。心理学、社会学からマンガ、演劇まであらゆるジャンルの知識を駆使した日本人のための「非言語コミュニケーション」入門。(本誌カバーより引用)

感想
数年前に出版され一時話題になったこの新書を改めて読んでみた。
そもそもこの本を手に取った時の理由は、タイトルへの反感である。
しかし想像していたような卑屈な内容とは異なり、本書では日常をベースとした様々な仕草と内面との関連や、身近な漫画を例とした心的表現の方法など、かなり分かりやすくした心理学入門書のように、なかなか興味深い内容が取り上げられている。
この中から特に、私が個人的に印象に残った「間」について論じている箇所を取り上げてみる。

間とはタイミングのことである。
話しかけるタイミング、語り聞かせる時の間の取り方、そして間によって何を強調したいのか、といった「伝える技術」は良好な人間関係を築く上で非常に重要だ。
筆者いわく、最近会話においてタイミングの悪い人が増えたという。
これはとても耳の痛い話で、私自身、アルバイトの面接等の重要な場面でうまく質問に答えることが出来ずに苦い思いをしたことが度々ある。
このような失敗は、会話の内容によるというよりはむしろ相手の話の聞き方、そして質問に答えて会話を続ける時の間の悪さが原因であると考えられる。
実際、滞りなく受け答え出来る人をよく見てみると、話の中身よりも、相槌の打ち方等の間のつなぎ方を上手にしているようだ。
このようなことを考えると、タイミングというのがいかに大事であるかがよく分かる。
ネット社会でのやり取りは互いの時間の都合を考える必要がなくて便利だが、だからこそ普段目の前にいる相手の呼吸に合わせるという感覚をおろそかにしないようにしなければならないのだと感じた。
また、本書では、会話における間だけでなく「読み聞かせ」のコツについても述べられている。
先生が生徒に物語を話して聞かせるような時、どのようにすれば聴衆の興味を引けるのだろうか。
ただはっきり発音するだけでは、つい早口や棒読みになってしまうものだ。
ここでもやはり、呼吸の置き方が重要なのである。
適度な間が必要なだけでなく、たまに相手を驚かせるような、「沈黙」を上手に使う必要があるという。
このようなちょっとしたテクニックは、学校の教師だけでなく社会の様々な場において役に立つだろうと思われる。

以上のような、タイトルからはあまり想像のつかない、人間の仕草や心理に関する豆知識が本書には多く書かれている。
ここではごく一部しか取り上げられなかったが、興味のある方は是非ご一読してみたらいかがだろうか。