架神恭介「もしリアルパンクロッカーが仏門に入ったら」@姫神

シド・ヴィシャスの生まれ変わりと囁かれる新進気鋭のパンクロッカーまなぶは、ふとしたことで“仏教”と出会います。はじめは難しさにとまどうのですが、リアルパンクロッカーを目指すのに仏教が役立つことに気づき、謎めいた僧侶(ジジイ)と共に仏教とは?悟りとは?の答えを求める旅に出ます。楽しみながら仏教の思想と歴史が分かる、まったく新しいタイプの仏教入門書。
(「BOOK」データベースより引用)

まず目の惹かれるところはこの特徴的なタイトルだろう。昔、一世を風靡した「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」を彷彿とさせるこのタイトルを見て、おそらく「ああ、また二匹目のどじょうを狙った質の悪いふざけた本か……」などと思ったのではないだろうか。だが読み進めていくうちにタイトルを見て下した判断は間違っていたことに気づく。それは5ページにも渡る参考文献からもわかることだろう。

リアルパンクロッカーであるまなぶと仏教に精通したジジイが釈尊、龍樹、玄奘三蔵最澄法然日蓮、禅僧といった仏教における重要人物の元を訪れていく小説部と、筆者による解説部に分かれている。特筆すべきは解説だろう。新書というと小難しい言葉を使ってなんだかよくわからない文章、ましてや宗教などという、言ってしまえば胡散臭いものを解説しているのだ。当然ややこしいものと思ってしまう。しかしこの本はわかりやすくくだけた言い回しで解説してくれる。帯の「世界一わかりやすい仏教入門書」の文字に偽りはない。

我々日本人は宗教を「なんだかよくわからない胡散臭くて関わりたくない危ないもの」と考えがちである。だが「なんだかよくわからない」からこそ「胡散臭く」、「危ない」のだ。筆者曰く「宗教は人をハッピーにするための道具」なのだという。(この辺の解説は同筆者の「完全教祖マニュアル」に詳しい)その「ハッピーにするもの」という認識がないために、カルト宗教に嵌まってしまう人が現れるのではないだろうか。宗教を信じれば救われるのは当然なのだ。信じれば救われると思わせて人をハッピーにするものが宗教なのだから。そんな無知から来る不幸を防ぐためにも本書を読んで宗教を学ぶのもいいのではないだろうか。ただし、本書を読んで仏教をわかったつもりになってはいけない。本文中でも触れられている通り、本書はあくまでわかりやすさを追求した筆者の解釈による解説であり、入門書にすぎないのだ。