お題「アイスクリーム」「ダンベル」「教室」@伏木朔


 放課後の教室で待ち合わせるのが、私たちの約束だった。


「別れよう」
 別れを切り出したのは私の方だった。いつもと同じように一緒に帰ろうとしたところで、突然別れを切り出した私に彼はとても驚いた様子だった。
「・・・なんで、そんな急に」
「付き合ってみてちょっと違うなと思ったんだよね。なんていうか、彼氏っていうより友達って感じだなって」
 そんな私の主張を聞いて、彼は納得したようなそうでないような複雑な表情を浮かべながら了承してくれた。
「そうか、わかった。別れよう」
 その後、私たちは少し話して別れても友人という関係でいようと決めて、彼は教室を出て行った。


 私は教室に残って彼と過ごした日々を思い返す。
帰り道で一緒に食べたアイスクリームはいつもよりとてもおいしく感じたこととか、何でもないことが彼といると輝いていた事とか。
そうして、まだ私が彼の事を愛していると痛いくらいに実感するのだ。
本当は別れたくなかった。でも彼と私の親友が互いに想い合っていることに、気がついてしまったのだ。
最初は嫉妬や、妬みなどどす黒い感情がのしかかってきて、毎日ダンベルでも抱えているかのように心が重苦しかった。
親友にきつくあたって、彼を束縛するような事をした。逆効果だと頭では分かっていても止められなかった。彼の私を見る目が次第に険しくなって、ようやく別れようと決心がついた。


 ねえ、別れようと言ったとき貴方は驚いたけれど、悲しんだり残念がったりはしてくれなかったね。


「っふ、うう・・・」
 私は一人、声を殺して泣きながら願う。
 どうかこの想いが涙とともに流れてしまいますように