三秋 縋「三日間の幸福」@祈灯愁

あらすじ

いなくなる人のこと、好きになっても、仕方ないんですけどね。

どうやら俺の人生には、今後何一つ良いことがないらしい。
寿命の”査定価格”が一年につき一万円ぽっちだったのは、そのせいだ。
未来を悲観して寿命の大半を売り払った俺は、僅かな余生で幸せを掴もうと躍起になるが、何をやっても裏目に出る
空回りし続ける俺を醒めた目で見つめる、「監視員」のミヤギ。
彼女のために生きることこそが一番幸せなのだと気付く頃には、俺の寿命は二か月を切っていた。
ウェブで大人気のエピソードがついに文庫化。(現代:『寿命を買い取ってもらった。一年につき、一万円で。』)
(本誌裏表紙より)

感想
まずはこの本を読んだ僕が思ったことを述べる。

「どんな人間にだって、生きていれば、良いことがある」

このような言葉を、僕は今まで生きていただけでも何度だって聞いてきた。
それはテレビの中であったり、小説の中であったり、はたまた友達との会話の中でだったり。
僕はその言葉を何度だって疑ってきましたが、最後には信じる方向に落ち着いていました。
この本を読んで、今までの自分の人生を振り返ってみると、少し意味を取り違えていたかなと思えてきました。

「どんな人間にだって、生きていれば、(そのうち考え方が変わって)良いことがある(ような気がする)」

これが正確なのではと思いました。
生き方なんて人それぞれである。
一見幸せそうであることも、別の視点からすれば、不幸せなのかもしれない。
その逆もまた然りである。



それでは本誌について、僕の感想を書く。

主人公はひねくれた性格をしているようにはじめは思えたが、終始一貫してまっすぐ生きていたように思える。
その点で言うと、好感が持てる。
そして主人公の醜い部分をも好いてしまえるような物語には舌を巻いた。
この手の話で、僕はあまり好感が持てたことが少ないからだ。

ミヤビとの関係も心地よいものであった。
掛け合いは漫才のようにテンポがいい、、、ものではなく、淡々としたものである。
でもそれが現実味を醸し出しているように思えて仕方がない。

また、寿命を売り払ってしまったことによる主人公の変化、そしてつられるかのように変わる周囲。
それがおもしろかった。
定番ではあるものの、やはり定番だからこその面白さがあったと言えよう。

最後の盛り上げ方は見応えがあり、つい涙を流してしまうほどだった。
一人が頑張ってもたかがしれていると思っていた僕の先入観を打ち砕くには十分過ぎるほどだ。


そして何といっても、終わりはこうでなくちゃと言わんばかりに、僕好みの終わり方をしてくれた。
ありがとう、三秋さん。



一応、ネタバレなしで書いたつもりだが、もしもネタバレを含んでいたら、お詫び申し上げる。
気になったのなら、読んでみることを勧める。

それでは、ここまで読んでくれてありがとう。
またの機会に一読してもらえたら嬉しい。