三浦しをん「舟を編む」@掛流野カナ


あらすじ
言葉に対する鋭い感覚を買われ、新しい辞書『大渡海』の編纂に関わることとなった主人公「まじめ」。そんな彼が恋に仕事に奔走するお話。


感想
以前映画化されたときから気になっていたもののなかなか読めず、先日ようやく読むことができました。


まず、この本は言葉の面白さをとても丁寧に伝えてくれています。
たとえば「のぼる」と「あがる」の違いに関しても、作中で主人公が生真面目に考えてくれています。
主人公の論理だった考えを辿っていくと、その違いをすっきりと区別することができ、読んでいてとても清々しい気持ちになりました。
普段、何気なく使っている言葉がどれだけ複雑なものなのかを教えてくれる一冊です。
言葉を扱う文芸部員として、とても勉強になる小説でした。


そして言葉の面白さだけでなく、この小説では主人公が初めての恋愛に翻弄される姿も書かれています。
個人的には、自分の感情が恋なのかどうか分からず、最初に「恋愛」を辞書で引いて眺めている主人公が微笑ましくてよかったです。
そして気が付けば「この説明だと異性間に限定されてるけれどいいのだろうか……」と考え始めてしまう主人公。
彼の真面目さもよく表しているシーンだと思いました。


堅い話も多いものの、全体はとても読みやすく面白い一冊でした。