タキガワマミ「山口あるある」@麻木

○内容

今も昔も、山口には「ぶちすごい」がいっぱい。我らがお国自慢をたーぷり詰め込みました。

(「BOOK」データベースより)

○感想

 本を見た時、山口県民としてはこれは買わざるを得なかった。中身を見ると大きく食、地域、歴史、文化・人物という4章構成で、それぞれの章に関わるエピソードがイラストとともに並べられており、それぞれのエピソードに対して著者がコメントを入れるという形式なっていた。
 読んでいくうちに、住んでいるだけではわからない山口県の他の地域のことも出てきて、東西南北でここまで違う文化があるのかと感心させられた。おそらくざっくり分けると、中国山地を挟んで日本海側の山陰地方と、瀬戸内海側の山陽地方の2つだが、この両者をつなぐ交通手段が乏しく(鉄道で言えば美祢線山陰本線だが、本数はお察しである)、また山が入り組んでいるため、地方内よりも地方間の交流が比較して難しいためではないかと考える。
 話はそれたが、県民としては名称を出されてああそこか、とわかるのだが、県外の人はまず地名や施設にピンとこないと難しい本ではないのだろうかと思った。こういう本なら、都市名・地方名と、本で言及しているメインの施設を載せた地図があってもよいのではないか、と思った。
 もっとも、お国自慢と紹介文に記載している点、県民として苦笑するネタも多数盛り込んでいる点を考えると、県民向けであろうということは想像に難くない。しかし、お国自慢といってもプラスの面だけではなく、マイナスの面もしっかりと書いてあるあたり、著者は努力していると思う。
 田舎であるが故の自虐ネタがわりと多いのは、都会に比べると劣るように感じるためではないかと考える。都会に住んでいるとよくわかるが、情報も物流も世論も、東京をはじめとした人が密集している地域、いわゆる都会を中心に回っている。山口に住んでいる時は市街に出るまで数十分以上かかっていて、出たとしても周りにあるのはショッピングモールが1つと、コンビニとスーパーが少しある程度だった。しかし大阪に来ると、地下鉄や電車で数十分とたたずに行けて、駅を出れば立ち並ぶビルと、ごったがえす人と、溢れんばかりの情報と物の多さに圧倒される。なんでもできるのではないかという錯覚さえ抱いてしまう。流れる時間が早すぎて、追うのに必死だ。それに比べたら、確かに田舎の方が生活していく上で大変ではないかと思われる。働き口は都会に比べれば少ないし、車を持ってないとお話にならないというのが多々ある。転職も容易ではないように思える。
 けれども、どちらがいいという話ではないと私は思う。そういう一面もあるが、生きるということは、そこに生きる人が積み上げてきた風土や繋がりと関係してくると思う。知識不足で詳しく議論できず申し訳ないが、ふとした瞬間に生活を見直すと、自分のみならず周りの環境や人がどうなのか、いつもとは違った見方ができるのではないかと思う。そういった意味で、私はこの本を読むことで改めて郷土の風土や人を考えるきっかけを持てたのではないかと考える。
 なにも山口に限った話ではない。自分の生まれたところを、育った場所を、人を、もう一度振り返ってみてはどうだろうか。生きていく上での何かしらのヒントがあるかもしれない。