古川日出男「gift」@青桐 李

あらすじ

「なかなかキュートな泥棒なのよ」。恋人が教えてくれた、妖精の足跡の捕まえかた。ぼくが試してみると、本当に歩いた跡が残っていた。そこで、妖精の映像を撮影しようとするが・・・・・・(ラブ1からラブ3)。水没したお台場に出来た新国家、廃墟で死を待つ少女、校舎の屋上にある秘密の楽園――。日常の隣りにある小さな奇蹟を、鮮烈に描いた掌編集。単行本未収録の作品を加えて待望の文庫化。(文庫版裏表紙より)

感想

 非常に短い作品たちが1冊に20本入っています。どれも独特なタイトル、個性的な設定、小気味良いテンポの文体が持ち味です。

 長編小説とは趣が異なるので、長編をよく読む人は少し読みにくさを感じるかもしれません。反対に詩や警句が好きな人は読みやすいと思います。また、どの作品も唐突に話が始まるので、流れについていきにくい感じもあります。正直私自身も読んでいて意味がよくわからなかったものもありました。ですが、どんな人でも20ある作品のうちいくつかは本当に面白いと感じられるのではないかと思います。幅広いテイストの作品がスキマ時間で読める点がこの本のおすすめできる点です。

 個人的に一番おすすめしたいのは「ショッパーズあるいはホッパーズあるいはきみのレプリカ」です。たった4ページですがよくできていて大変面白かったです。ちなみに私が一番好きな作品は「光の速さで祈っている」です。少し切ない作品です。