赤城大空『二度めの夏、二度と会えない君』@祈灯愁

あらすじ
突如転校してきた森山燐は不治の病を患っていた。俺は彼女と共に、ライブを演り、最高の時間を共に過ごし、……そして、燐は死んだ。俺に残されたのは、取り返しのつかない、たったひとつの後悔――決して伝えてはいけなかった言葉。俺があんなことを言いさえしなければ、きっと、燐は最後まで笑顔でいられたのに……。――二度めの夏。タイムリープ。俺はもう一度燐と出会う。あの眩しい笑顔に再び。ひと夏がくれた、この奇跡のなかで、俺は自分に嘘をつこう。彼女の短い一生が、ずっと笑顔でありますように……。
(裏表紙より)

感想
 最近は何故だか読む小説の内容に音楽バンドが絡んでくることが多くなりました。それに感化されてか、いま無性にピアノかギターを弾きたいです……どちらもできないけど。

 さて、本題に移ります。ネタバレを少し含むこと、既知の元書かせていただくことをお許し下さい。

 この作品はタイトルからでも予想できるように、タイムスリップものです。主人公が未練を残してしまったことをやり直しに過去へと戻るお話です。ただ単純なタイムスリップものと違って、バタフライ効果を採用している点は評価して良い点だと思われます。ほんのちょっぴりとですが、後の方になっていきなりかと驚かされる場面もありました。あと、主人公の一人称なのですが、周囲の人達の感情も表現されていて、素晴らしいほろ苦青春ものとして上手く出来ていました。また伏線回収もみごとにきっちりかっちり行っていたので、いい感じで読み終えることができました。
 
 やはり残された人はつらいですよね。主人公もヒロインに置いて行かれちゃうので、その後のタイムスリップした後にも、その辛さや悲しさがにじみ出ています。ただ一つのことをやり直すために、いなくなった彼女ともう一度会って、経験した日々をもう一度繰り返す。終着点がわかっているのに……。別のことをすれば、別の結果が待っているんじゃないか? そんな誘惑にかられながらも、苦しみながら耐え抜く主人公によく頑張ったと頭をなでてやりたいです。

 特に思い出深いのは、クライマックスである最後の方の場面です。最後の最後に主人公にも幸があるのかと思っていましたが、まさかああなるなんて……。たしかに主人公やその仲間にとっては、一つの方向性としてはアリだと納得できましたが、もう少し報われてもいいんじゃないかと、主人公に感情移入してて思いました。
 
 これぞ青春! ってほど、わいわい騒いだり、明るい話ばかりじゃないけど、こういう一途な想いを胸に抱いている主人公は見応え充分でした。挿絵のキャラクターもなかなかに可愛らしいタッチで書かれていて、想像しやすかったです。
 
 以上で小説の紹介を終わります。ここまで読んでくださった方々、ありがとうございました。もしよろしければ、小説の方も読んでみてください。