太陽に向かって吼える蛇。山道。
マラソンランナーのような孤独。
汗が伝ってゆく先を食い止める。その首筋。脈動。
そのリズムとは裏腹に、のんべんだらりと鐘が鳴る。
夕方五時の鐘が鳴る。
反響して、街に降りそそぐ。
そのうちに日没がやってくる。この世の終わりみたいな紫色の空が訪れて、それすらも消え失せて、夜が始まる。
夜が始まれば、提灯が点いて、露店が連なって、人が群れて――
ああ、祭の夜だ、自分が自分でなくなってしまうような!
辺りは闇に包まれた。乱暴に歩けば足を踏み外してしまうだろう。
そのとき、耳へと流れ込んできた。
篠笛。祭が始まる。
その合図に囃し立てられて、月が赤く染まる。
空気は意思を持って、体にまとわりついてくる。
汗にまみれた服が乾くことは、もうない。
そうである限り、祭はいつまでも続くだろう。