壁井ユカコ『NO CALL NO LIFE』@甘味重

角川文庫ウラよりあらすじ:
サンタさんにお願い。
クリスマスにおかあさんを届けて。
高校3年の夏、携帯電話に残された過去からの留守メッセージに導かれて、佐倉有海は学校一の問題児・春川と出会った。
心に同じ欠落を抱えた2人は互いの傷を埋めるように惹かれあうが、それはあまりにも拙く刹那的な恋だった。
時を超えた留守電の真相が明かされる時、有海の衝撃の過去が浮かび上がる…。
痛々しくて、たまらなく愛おしい、涙のラブ・ストーリー


数年前に知人から、お前の書く文章はこの人に似ている、と言われたことを思い出して購入。
似ているかどうかはとりあえずさておき、楽しみながらさくさく読めました。
会話と会話の間の空気感や、けだるい夏休みに友達とグダっている時のどこへも行けないような雰囲気など、高校生であるヒロインをとてもうまく描けていると思います。
読んでいると、学生時代に引き戻されます。
でも、キャラクターに自分をそのまま投影させることはできませんでした。
しっかりキャラが自立しているためだと思います。


前半はわくわく読めたのですが、ラストに向かうにつれ現実味が失われていったのが個人的には残念でした。そもそも現実味を求めていない作品だったのかもしれませんが、リアルに描写がされていただけにがっかりしたのが本音です。オチのネタバレになってしまうのであまり言えませんが、最後こうしてしまえば全部オチがつく、みたいなところが最近の(特に、若年層むけ、もしくは若年層の書いた)小説に多い気がします。これについては好みの問題かもしれませんが……

雰囲気や細かい描写はかなり好みだったので、ほかの著作も読んでみたいと思いました。
ライトノベルでたくさん書かれているようなので、ハナっからのフィクションとして入れば次はがっかりすることもなく楽しめるかも、と思います。

ちょっと個性的で、さくっと日常系小説の読みたい方はぜひ。