よしながふみ『フラワー・オブ・ライフ』@たゆな

【あらすじ】
「不健全さ」を持った登場人物達がそれに負けずに、青春をエンジョイするお話。
ちなみに作者は好物は男性同性愛とメガネである。

【感想】
登場人物は世間では不健全だといわれるような性質を持っている。
主人公の花園春太郎は白血病を患い、1年遅れで高校に入学する。姉は引きこもり。春太郎の親友である三国はメタボ。クラスメイトの真島はメガネのイケメンであるがアニメオタク……などなど豪華な顔ぶれである。でも少しぐらい不健全さがあるほうが、いわゆる普通の人なのである。
 登場人物はみな素直すぎるほど、素直である。少し後ろ向きな所はあったとしても全体としては前向きである。花園春太郎はクラスに馴染むために積極的に行動するし、真島は相変わらず電波だ。そんな彼らが青春を過ごしていく。
 偏った読み方をしなければ、読んでいてポジティブになれることは間違いない。

一つ印象に残ったシーンがある。
激昂した真島がある人物を殺そうとナイフを手にする。世間一般の人がその場面を見たら、きっと彼の行動を止めようとするか、被害に巻き込まれないように逃げたり、合理的な態度を取るだろう。しかし春太郎は違ったのである。春太郎は煽り立てるような文句を並べてしまう。真島はさらに憤慨するが、春太郎のただならぬ様子を感じ取ってしまう。簡単に言えば、春太郎はツンデレだったのである。そして真島も実はツンデレだったのだ。
お互い相手の気持ちは分からない。しかし、ただ一つ分かることは相手が自分のことを気にかけていてくれる、ということだけだ。この事は相手のことを全て知っていることより強いものである。知っていることはただの客観的事実であり、気にかけるということは主観的事実である。言われてみれば当たり前なのだが、この当たり前の事をピッタリと描写された作品を私は読んだことが無かった。