谷川史子『くらしのいずみ』@たゆな

新年度が始まりました。
今年も文芸部ことのはをよろしくお願いします。




作品: くらしのいずみ
著者: 谷川史子


【概要】
6組の夫婦を描いた恋愛オムニバス。作者初めての青年誌掲載作品。
死んでも愛してるよとか、お姉ちゃんを守るんだとか、本当に俺のこと好きなのかとか、そんな作品。


【感想】
少女漫画によくある批判として、こんな人間・展開は現実にありえないとか、リリカル(笑)とか、ファンタジー(笑)とか、挙げられます。
この作品は実際にその通りなのですが、私は楽しめましたし、胸がキュンとしました。
確かに少女漫画の中にはリリカルで興ざめする作品もあります。
どうしてかな、と理由を少し考えたのですが、この作品は非常に少女漫画だったのです。
DVから始まる恋とか、ホストが恋人とか、実は癌でした、とかいう小細工なしの作品です。
悪く言えばステレオタイプともいえますが、私は洗練された印象を受けました。
これは少女漫画の基本形であるとともに傑作であると思います。

上の表紙をみてもらえると、絵もすっきりとした線で描かれているので、少女漫画初心者でも比較的読みやすいのではないかと思います。
私自身こういうシンプルな絵は好きです。
少女漫画にのっているような純粋な恋愛ものの作品を読んだことの無い人は、ヤングキングでこの作品を読んだ時、新鮮な気持ちになれたと思います。
そういえばYoungYou(廃刊しました)とコーラスで『ハチミツとクローバー』を連載している羽海野チカヤングアニマルで『3月のライオン』を連載を始めましたし。
少女漫画作家が男性誌に連載をしたり、男性誌女性誌に相互に影響を与えあうことは、以前存在した男性漫画・女性漫画の壁を取り去り、作品の幅が広がるので、良いことだと思います。