間武「日常を袋詰めにして、海に捨てた罪」@青桐李

本の紹介

「人知れぬ愛の過ぎ去りし/遠くのびた二本の轍に/濁った涙が溜まっている」(人肌硝子)、
「立ちすくむ裸のおまえ/俺の舌が螺旋につたう/巻きつく柔らかな銀糸のように」(うわめづかい)、
「匂い立つ鉛色の殺意に/手を添え引き金を引く/重心の狂った夜の底」(歪んだ燈心)、
「朱肉にくちづけて/かなわぬ恋に捺印する/声を失くした少女」(夜のタラップ)、ほか全233篇収録。
(裏表紙より)

感想

四つの章に分けられた三行詩集です。退廃的で耽美な作風なのですが、ねっとりと絡みつくような読後感の作品もあれば澄み切った切なさを感じさせる作品もあります。いずれも情景が手触りを伴って思い浮かぶような作品です。
愛し合う男女を題材にした章や、少女を題材にした章など、章によって題材がまとめられているのでその時の気分に合わせて読みたくなる本です。

詩には一般的な語彙が使われているのですが、語彙のセンスがすばらしく日本語の美しさを改めて感じられる詩集だと思います。
個人的に官能的な描写は好きではないので基本的に避けているのですが、この詩集のそういった描写にはのめり込んでしまうような魅力を感じるのも、使われている言葉の美しさによるものでしょう。人間の情欲や狂気を短い言葉で綴っている詩たちを読んでいると、まるで昆虫標本や剥製を見ているような感覚に陥ります。そのものの生々しさをまざまざと見せつけながらも絶対的な静けさを持っているところが共通しているからでしょうか。


ところで、「日常を袋詰めにして、海に捨てた罪」にはどのような罰が下るのでしょう。
気になるところです。