森博嗣 「悪戯王子と猫の物語」@青桐李

内容紹介

一度しか読むことができない物語を旅する悪戯王子と猫。彼らが出逢う20の物語は、ときには優しくときには残酷、ロマンティックでしかもリアリスティック。無垢と頽廃を同時に内在する、ささきすばるのイラストと、詩的な森博嗣の文章とが呼応し、次々と展開するイメージ。観念の世界を揺蕩う大人のための絵本。(Amazon 商品ページより)

感想

この本はミステリではなくショートショート集あるいは散文詩集といった体裁です。ささきすばる氏の挿絵と森博嗣氏の文章が、幻想的な世界観を醸し出しています。

私がこの本の中で一番好きな作品は『海岸を歩く』という作品です。夕暮れの浜辺を二人で歩いているシーンを描いているのですが、短い文の連続で描く海の情景が幻想的かつとてもリアルでその情景が目に浮かぶようです。

『ここはラッキィな場所だ。何故だか、そう思う。
 どこかに、それを示す看板がないか、と探したけれど、
 君の瞳の中にも、見つからなかった。』

この作品はハッピーエンドではありません。ですが、この結末こそ、数ページしかないこの作品の美しさを形作っていると感じられます。