はやみねかおる『少年名探偵 虹北恭助の冒険』@来幸 笑

 『少年名探偵 虹北恭助の冒険』は五話からなる短編集です。主人公は古本屋の虹北恭助。語り手は幼なじみの野村響子ちゃん。恭助は小学五年生ですが、学校に行っておらず、一日中本を読んでいます。そんな変わった少年ですが、一番特別なのは名探偵であること。駄菓子屋にあるはずのない商品が置かれていたり、心霊写真の騒動があったり、透明人間が現れたり、数々の不可思議な事件が起こりますが、恭助はそのすべてを話を聞いただけでいともたやすく解決してしまうのです。あまりにも鮮やかに謎を解くことから、友人たちは敬意を込めて『魔術師』とよんでいます。
 この物語の魅力のひとつは虹北恭助その人です。恭助は自分で歩き回って調査したりはしません。ただ話を聞き、推理する。このようなタイプの名探偵は安楽椅子探偵と呼ばれます。不可思議で非日常的な事件はワクワクすると同時にどこか不気味なところがあります。恭助のような超人的な存在は読み手にも安心感を与えてくれます。
 また、事件も魅力的です。不可思議な事件が起こると世界が日常から非日常へと一転します。この日常と非日常のずれがたまりません。
 そして謎解き。名探偵が謎を解き、謎が謎でなくなり、非日常が終わって日常が帰ってくる。その瞬間こそがミステリの醍醐味なのでしょう。
 はやみねかおる先生は子どもたちに面白い本を読ませたい、という思いがきっかけで小説家になったそうです。そんな思いから生まれた『少年名探偵 虹北恭助の冒険』は老若男女どんな人でも心から楽しめる作品はないかと思います。それでは、皆さんが『赤い夢』を見ることを祈りまして。