瀬尾 まい子『天国はまだ遠く』@六華

 仕事も人間関係もうまくいかず、毎日辛くて息が詰りそう。23歳の千鶴は、会社を辞めて死ぬつもりだった。辿り着いた山奥の民宿で、睡眠薬を飲むのだが、死に切れなかった。自殺を諦めた彼女は、民宿の田村さんの大雑把な優しさに癒されていく。大らかな村人や大自然に囲まれた充足した日々。だが、千鶴は気づいてしまう、自分の居場所がここにないことに。心にしみる清爽な旅立ちの物語。
Google ブック検索」より


 数年前に映画化もされた作品。
勉強や仕事、人間関係などに疲れることなんて私たちにとってはもはや日常茶飯事です。
何かから逃げだしたい! と思った時、主人公千鶴に自分自身を重ねて本の世界へ、そこから民宿田村へと逃げ出してしまいましょう。
そこでは、都会の喧騒からは切り離された穏やかな時間が流れています。

一見、重くなりそうな自殺志願者というテーマですが、水彩画のように淡々と描かれており、スッキリさっくりと読めてしまいます。
その爽快感がまた良いのです。

瀬尾さんらしいほんわかと暖かく優しい空気に満ち溢れた本作は、疲れた人の心に安らぎを与えてくれる再生の物語です。