web書評

野村美月『陸と千星 〜世界を配る少年と別荘の少女』@祈灯愁

あらすじ 両親の離婚話に立ちすくむ千星(ちせ)。明るく笑ってみせることで、壊れそうな家の空気を辛うじて保ってきた。けれど本当は、三人で一緒にいたいと、素直に泣ければよかったのだろうか……。新聞配達のアルバイトを続ける陸(りく)。母は家を空けた…

森博嗣 「悪戯王子と猫の物語」@青桐李

内容紹介一度しか読むことができない物語を旅する悪戯王子と猫。彼らが出逢う20の物語は、ときには優しくときには残酷、ロマンティックでしかもリアリスティック。無垢と頽廃を同時に内在する、ささきすばるのイラストと、詩的な森博嗣の文章とが呼応し、次…

太宰治「パンドラの匣」@砂金

あらすじ「健康道場」という風変わりな結核療養所で、迫り来る死におびえながらも、病気と闘い明るくせいいっぱい生きる少年と、彼を囲む善意の広人との交歓を、書簡形式を用いて描いた表題作。社会への門出に当って揺れ動く中学生の内面を、日記形式で巧み…

赤城大空『二度めの夏、二度と会えない君』@祈灯愁

あらすじ 突如転校してきた森山燐は不治の病を患っていた。俺は彼女と共に、ライブを演り、最高の時間を共に過ごし、……そして、燐は死んだ。俺に残されたのは、取り返しのつかない、たったひとつの後悔――決して伝えてはいけなかった言葉。俺があんなことを言…

杉井 光『さよならピアノソナタ3』@祈灯愁

あらすじ 初めてのライブを終え少し距離が縮まったナオと真冬は、息つく暇もなく二学期のイベントシーズンを迎える。合唱コンクールに体育祭、フェケテリコ初の単独ステージとなる文化祭。神楽坂率いる民族音楽部の面々は、ときに敵としてときに仲間としてし…

古川日出男「gift」@青桐 李

あらすじ「なかなかキュートな泥棒なのよ」。恋人が教えてくれた、妖精の足跡の捕まえかた。ぼくが試してみると、本当に歩いた跡が残っていた。そこで、妖精の映像を撮影しようとするが・・・・・・(ラブ1からラブ3)。水没したお台場に出来た新国家、廃墟で死…

間武「日常を袋詰めにして、海に捨てた罪」@青桐李

本の紹介「人知れぬ愛の過ぎ去りし/遠くのびた二本の轍に/濁った涙が溜まっている」(人肌硝子)、 「立ちすくむ裸のおまえ/俺の舌が螺旋につたう/巻きつく柔らかな銀糸のように」(うわめづかい)、 「匂い立つ鉛色の殺意に/手を添え引き金を引く/重心の狂った…

タキガワマミ「山口あるある」@麻木

○内容今も昔も、山口には「ぶちすごい」がいっぱい。我らがお国自慢をたーぷり詰め込みました。(「BOOK」データベースより)○感想 本を見た時、山口県民としてはこれは買わざるを得なかった。中身を見ると大きく食、地域、歴史、文化・人物という4章構成で、…

さくらももこ「ひとりずもう」@江乃本

紹介(Amazonより) 『もものかんづめ』『たいのおかしら』『さるのこしかけ』『さくら日和』に続く、さくらももこの懐かし・おもしろエッセイです。 『さくら日和』以来の、6年ぶり書き下ろし。著者が最も得意とする少女時代に加え、今まで書いたことのない…

燈乃ままれ『まおゆう魔王勇者』@窪屋

あらすじ 魔王「この我のものとなれ、勇者よ」 勇者「断る!」王道RPGならば、クライマックスであるはずの勇者と魔王の対峙から本作は幕をあける。 魔王は勇者に、自分を倒しても戦争は終わらないと告げる。 人間と魔族の戦争を、本当の意味で終わらせるには…

時雨沢恵一「夜が運ばれてくるまでに」@麻木

○あらすじ 男の子と女の子は、隣りに住むおばあさんの家に遊びに行き夜が来るまでのわずかな時間に、いろいろなお話を聞くのが好きでした。―もう、あの村におばあさんはいません。男の子は、小説家になって、女の子は、歌手になって、ときどき、おばあさんの…

穂村弘「整形前夜」@青桐李

あらすじだが、と私は思う。日本女性の美への進化もまだ完璧ではない。例えば、踵。あの踵たちもやがては克服され、「おばさんパーマ」のように絶滅してゆくのだろうか。かっこ悪い髪型からの脱出を試み、大学デビューを阻む山伏に戦く。完璧な自分、完璧な…

渡邉美樹「きみはなぜ働くか」@江乃本

内容 「きみたちは人生の主人公なんだ!」「夢なくして、何が人生だ」――。新たな挑戦を続けるワタミ会長・渡邉美樹が、「なぜ生きるか」「なぜ働くか」をすべての男女に問いかける。珠玉のメッセージ集。(本誌裏表紙より引用)感想 学生の身分である自分は…

三上康明「恋の話を、しようか」@祈灯愁

あらすじ 地方都市の冬。 高校生の桧山ミツルは、予備校で顔も知らない三人の生徒たちと同じ部屋になり――テスト中に停電が起きた。 なんでもない、一度きりの偶然のトラブルをきっかけに四人は出逢い、惹かれあっていく。 見上げれば灰色の空から雪……。 クリ…

三浦しをん「舟を編む」@掛流野カナ

あらすじ 言葉に対する鋭い感覚を買われ、新しい辞書『大渡海』の編纂に関わることとなった主人公「まじめ」。そんな彼が恋に仕事に奔走するお話。 感想 以前映画化されたときから気になっていたもののなかなか読めず、先日ようやく読むことができました。 …

西尾維新「少女不十分」@江乃本

あらすじ作家として名を馳せる三十路の「僕」は、自分の物語作りの基礎となった、トラウマとも言うべき出来事を回想する。当時大学生だった自分と、あるきっかけで出会った少女との交流を描いた物語。感想この本を読み始めた上で最初に気にかかったのは、こ…

三秋 縋「三日間の幸福」@祈灯愁

あらすじいなくなる人のこと、好きになっても、仕方ないんですけどね。どうやら俺の人生には、今後何一つ良いことがないらしい。 寿命の”査定価格”が一年につき一万円ぽっちだったのは、そのせいだ。 未来を悲観して寿命の大半を売り払った俺は、僅かな余生…

リチャード・カールソン「小さいことにくよくよするな!」@江乃本

内容(「book」データベースより) 「小さいことにくよくよしない!」癖を身につけると、人生は100%完璧にはならなくても、あるがままの現実を抵抗なく受け入れられるようになる。本書に書かれた戦略をためしてみれば、穏やかに生きるための二つのルールが身…

カズオ・イシグロ「わたしを離さないで」@江乃本

あらすじ 優秀な介護人キャシー・Hは「提供者」と呼ばれる人々の世話をしている。生まれ育った施設ヘールシャムの親友トミーやルースも提供者だった。キャシーは施設での奇妙な日々に思いをめぐらす。彼女の回想はヘールシャムの残酷な真実を明かしていく――…

米澤穂信「満願」@姫神

人を殺め、静かに刑期を終えた妻の本当の動機とは_。驚愕の結末で唸らせる表題作はじめ、交番勤務の警官や在外ビジネスマン、美しき中学生姉妹、フリーライターなどが遭遇する6つの奇妙な事件。入念に磨き上げられた流麗な文章と精緻なロジックで見せる、…

わかぎ ゑふ「リトル・チャロ」@祈灯愁

あらすじ ニューヨークの空港で飼い主とはぐれてしまった子犬のチャロ。 日本に帰って最愛の飼い主、翔太に再会できる日を夢見てあきらめずに歩み続ける――。 大反響の新型語学番組のストーリーを楽しむ、完全小説版。 (Amazon内容紹介より)感想 この小説はチ…

喜多喜久「ラブ・ケミストリー」@麻木

第9回『このミス』大賞優秀賞受賞作品。有機化合物の合成ルートが浮かぶという特殊能力を持つ、有機化学を専攻する東大院生の藤村桂一郎。ところが初恋によって、その能力を失ってしまった。悶々とした日々を過ごしていた彼の前にある日、「あなたの恋を叶え…

竹内一郎「人は見た目が9割」@江乃本

あらすじ 顔つき、仕草、目つき、匂い、色、温度、距離等々、私たちを取り巻く言葉以外の膨大な情報が持つ意味を考える。心理学、社会学からマンガ、演劇まであらゆるジャンルの知識を駆使した日本人のための「非言語コミュニケーション」入門。(本誌カバー…

架神恭介「もしリアルパンクロッカーが仏門に入ったら」@姫神

シド・ヴィシャスの生まれ変わりと囁かれる新進気鋭のパンクロッカーまなぶは、ふとしたことで“仏教”と出会います。はじめは難しさにとまどうのですが、リアルパンクロッカーを目指すのに仏教が役立つことに気づき、謎めいた僧侶(ジジイ)と共に仏教とは?悟り…

神永学『心霊探偵八雲』@窪屋

あらすじ 学内で幽霊騒動に巻き込まれた友人について相談するため、晴香は、不思議な力を持つ男がいるという「映画同好会」を訪ねた。しかしそこで彼女を出迎えたのは、ひどい寝癖と眠そうな目をした、スカした青年。思い切って相談を持ちかける晴香だったが…

梅田卓夫『文章表現 四〇〇字からのレッスン』@祈灯愁

あらすじ よい文章――つまり、わかりやすく、自分にしか書けない、そんな文章を書こう! 本書がめざすのは、種類やジャンルを超えたすべての文章に共通する創造的表現。 実践的に作文用紙に鉛筆を走らせ、友達やプロの作家の作品を味わい、創作の過程を通して…

イアン・ローレンス『The Wreckers』@窪屋

あらすじ 呪われた村に隠された秘密とは? ほんとうの犯人は? ラストのどんでん返しまで目が離せない本格冒険ミステリー (本誌帯より) 感想・書評 小説のなかでも人気のジャンルの一つである冒険小説。この作品はその冒険のスリルを主人公と共に味わえる作…

北山猛邦『ダンガンロンパ霧切』@刹那

あらすじ 謎の依頼を受け集結した五人の探偵たちを待ち受けていたのは「犯罪被害者救済委員会」が企む『黒の挑戦』を通じた連続探偵殺人事件の幕開けだった…!原作ゲーム『ダンガンロンパ』のシナリオライター・小高和剛からの直々の指名を受け、「物理の北山…

岡田淳『扉のむこうの物語』@祈灯愁

あらすじ もうひとつの世界はすぐそこに! 空間と時間がねじれた「むこうの世界」でさまよう行也たち。 こちらへもどるための扉はもうないのだろうか。 「こそあどの森の物語」シリーズで人気の岡田淳による大長編ファンタジー! (表紙帯より) 感想 この物…

仁木英之『撲撲少年』@楽惰三合

あらすじ 勇吾は地方から上京してきた平凡な大学生だ。 あるとき、バイト先で幼なじみの湊と出会い、旧友の鉄也が赤坂にある総合格闘技のジムに通っていることを知らされる。 勇吾がジム「アライズ」を訪れると、そこには昔と変わらずひ弱そうな鉄也が練習に…